住宅にも「かかりつけ医」が必要だと思う理由

人には、体の調子が悪くなったときに相談できる「かかりつけ医」がいます。

では、家はどうでしょうか。

「外壁にひび割れがある」
「天井にシミが出てきた」
「屋根が傷んでいると言われた」
「そろそろ塗装した方がいいと言われた」

こんなとき、多くの方が最初に相談するのは工事会社ではないでしょうか。

もちろん、工事会社は住宅を守るために必要な存在です。

しかし私は、工事をするかどうかを決める前に、まず建物の状態を確認する人がいてもいいのではないかと考えています。

「壊れている」=「すぐ工事」ではありません

私は30年以上、建築の仕事に携わってきました。

その経験から感じるのは、住宅の不具合にはそれぞれ「原因」があるということです。

例えば、外壁にひび割れがあったとしても、

  • どこに発生しているのか
  • どのくらいの幅なのか
  • いつ頃からあるのか
  • 雨水が入る可能性はあるのか
  • 建物の構造に関係しているのか

によって、考え方は変わります。

大切なのは、

「何を直すか」より先に「なぜこうなったのか」を考えること。

私はこれを住宅の「原因主義」と考えています。

全部を一度に直す必要もありません

特に築30年、40年と経過した戸建住宅では、気になるところがいくつも出てきます。

屋根、外壁、防水、雨樋、建具、給排水設備……。

全部を一度に直そうとすれば、大きな費用が必要になります。

そこで重要になるのが修繕の優先順位です。

① 今すぐ対応した方がいいもの

安全性や雨漏りなど、放置することで被害が大きくなる可能性があるもの。

② 数年以内に考えればいいもの

現在すぐに問題になる可能性は低いものの、経過を確認した方がいいもの。

③ 今は様子を見てもいいもの

多少の劣化があっても、すぐに工事をする必要性が低いもの。

この3つを分けるだけでも、住宅修繕に対する不安はかなり整理できます。

「工事を売らない人」がいてもいい

住宅について相談すると、

「この工事をやりましょう」

という話になりがちです。

しかし、本当に必要なのは、

「工事をすること」ではなく「安心して住み続けられること」

ではないでしょうか。

だから私は、工事を請け負うことを目的とせず、

建物の状態を確認し、住宅所有者が自分で判断するためのお手伝いをする存在

が必要だと考えるようになりました。

それが、私が考えている

「建物のお医者さん」

です。

人間の健康診断と同じように建物を診て、状態を記録し、必要であれば修繕の優先順位を考える。

そして、その記録を「住宅健康カルテ」として残していく。

何かあったときだけではなく、

「この家のことなら、まずここに相談してみよう」

と思っていただける存在を目指しています。

最後に

家は、長い年月を家族と一緒に過ごすものです。

古くなったからといって、何でも新しくする必要はありません。

まだ使えるものは使う。
必要なところは直す。
急がなくてもいいものは様子を見る。

そして、分からないときには専門家に相談する。

そんな住宅との付き合い方があってもいいと思います。

人には、かかりつけ医。
建物にも、かかりつけ医。

これからこのブログでは、戸建住宅について、

「これは本当に工事が必要なのか?」

「どこまで直せばいいのか?」

「業者さんにこう言われたけれど、本当なのか?」

といった、住宅所有者の方が実際に困りやすい問題を、現場に強い一級建築士としてできるだけ分かりやすくお伝えしていきます。